先輩看護師の背中
シリーズ第1弾
訪問看護ステーション ワトレイ
統括責任者 西田文世さん
病棟20年の葛藤から、ミャンマーでの価値観の転換へ
人生も看護観も豊かになる、訪問看護の魅力
約20年間の病院勤務、一念発起して渡航し、ミャンマーでの医療活動とそこで出会った新たな価値観。
老健での派遣勤務を経て、48歳で訪問看護の世界へ飛び込んだ西田さんに、看護観の変化と、人生を豊かにする訪問看護の魅力をお聞きしました。
未経験からの挑戦はどんなものだったのか。
そして在宅看護だからこそ感じられる”看護の本質”とは。

■病院で感じていた課題、そして単身ミャンマーへ
―まずは、西田さんの看護師としての歩みからお聞かせください。
西田さん:
約20年間、総合病院で脳外科中心に病棟勤務をしてきました。
寝たきりの患者さんが多い環境で、次第に自問自答することが増えていきました。
「心臓が動いているだけで、本当に”生きている”と言えるのだろうか?」
48歳のときに、「病院看護とは違う場所で看護を見直したい」と退職を決意しました。
そこから旅に出て、非営利団体に所属し、ミャンマーの山奥の病院で計1年活動しました。
そのとき、ミャンマーでの価値観の違いに深く気づかされました。
ミャンマーには徳を積む文化が根付いていて、何かをしてもらった人が「ありがとう」と言うのではなく、してあげた側が「徳を積ませてもらってありがとう」という価値観があったのです。
この経験が自分の看護観を見直す大きなきっかけになりました。
帰国後は、病院には戻らず、看護師派遣・紹介を行うNOSWEAT(現 MRTスタッフィング株式会社)に登録し、老健施設で半年間、派遣看護師として勤務しました。
その後、当時NOSWEATの代表だった長谷川氏から、訪問看護ステーションを立ち上げるので一緒にやらないかと強いオファーをいただき、ワトレイの立ち上げメンバーとして活動することになりました。
■「生命の法則を尊重する」看護が実践できる在宅
―ミャンマーでの経験がその後のキャリアへの大きな転換点となったのですね。
その経験は訪問看護ではどのように生きていますか。
西田さん:
訪問看護に足を踏み入れる前は、正直、「責任が大きすぎて無理だ」と思っていました。
でも実際にチャレンジしてみると、これが本来看護師としてやるべきことだと思う瞬間が多くあることに気づきました。
病院では患者さん1人に30分も使うのは難しいですが、訪問看護では「その人の生活の中」で向き合うことができます。
そして在宅は、自然の摂理に沿った看護ができる場所だと思っています。
例えば、
食事は無理に食べさせない
褥瘡は「治す」より「痛くない・感染させない」ことを優先する
病院ではできない「その人らしい最期を支える」看護ができる
といったことがあげられます。
『看護覚え書』のなかで、ナイチンゲールが強調したのが、
「看護(ケア)の実践を行うにあたっては、”生命の法則”・”自然の法則”を重視して、根拠に基づく行為をしなければならない」
ということです。
在宅ではそれが実践できる。
看護師として求められるものは、ここにあると感じました。
また、自分がオンコールの日にご逝去された場合、
「最期に私を選んでくれたのだと思うと、それは喜ばしいこと」
と感じ、今でもお看取りがあると涙してしまいます。

―まさに、何かをした側が「ありがとう」という看護観ですね。
しかし、未経験からの挑戦ですぐに慣れたのでしょうか。
西田さん:
分からないことばかりで、最初は「訪看なんて無理だ!」と思っていました。
経験や知識が足りないと感じ、とにかく勉強するしかないと、eラーニングや書籍を片っ端から買い漁り、猛勉強しました。
立ち上げ初期は忙しく、9:00~18:00で休憩もほとんど取れない状況で、1日10件訪問した日もありました。
でも、その不安を乗り越えるための努力が、今の自信につながっています。
■褒め合う文化、「おたがいさま」を大切にするチーム
―本当に大変だったんですね…。
現在創業から11年目とお聞きしていますが、現在のワトレイではどんな働き方ですか。
西田さん:
現在は「時間」で訪問数を調整しています。
・30分訪問=1日8件
・60分訪問=1日4件
無理のないスケジュール管理が、質の高いケアにつながっています。
ワトレイ北は4名体制で、オンコールは月7回以上です。
少人数ゆえに休みが取りづらい時期もありますし、子育て中のスタッフも多いため、
患者さんは全員でローテーションし、全員が全員の患者さんを把握できるよう工夫しています。
ミーティング体系は次のとおりです。
・毎朝:15分、全事業所オンラインミーティング
直行直帰なので、車の中からすることも
・毎週木曜:事業所ごとミーティング
・2ヶ月に一度:全事業所ランチミーティング
―職場の雰囲気はどうですか?
西田さん:
とにかく「褒め合う文化」が根付いています。
「あの対応よかったよ」
「この前助かった、ありがとう」
こんな言葉が日常的に飛び交います。
褒める9割、指導1割くらいの感覚ですね。
困った時は時間を問わずすぐ相談できる、助け合えるチームです。
休み希望などはみんなで相談しながら決めています。
子育て中のスタッフは急な休みになることもありますが、みんなでカバーする協力体制が整っています。
逆に出勤できた日は「めちゃくちゃ働いて返す」姿勢の方が多いのも特徴です。
子育て世代は子どもの急な病気で休むこともありますし、子育てが終わった世代は親の介護で休むこともあります。
持ちつ持たれつの精神で働いていますね。
「今できる人が、できることをする」
このスタンスが、ワトレイを支えています。


■未経験者でも達成感や成長を感じられる仕組みとフォロー体制
―さまざまな背景を持つ看護師の皆さんが、チームで助け合える環境づくりを実践されているのは素敵ですね!
とはいえ、訪問看護未経験者にとっては一人で訪問するハードルはなかなか高そうに感じますが、教育体制などはいかがでしょう?
西田さん:
もちろん未経験者でも安心して取り組めるよう、次のような体制にしています。
▼1ヶ月目
1~2週目:
先輩と同行してすべての患者さんを把握。
↓
3~4週目:
新人が主に担当し、先輩が同行してフォロー。
※呼吸器など医療的ケアが多い場合は、5回ほど2名体制で訪問し状況等をしっかり把握
▼2ヶ月目
新人は最初の2ヶ月ほぼ毎日電話で先輩に相談。
その後、徐々に相談が減り、互いに成長を実感できます。
―患者さんを全員で把握しているからこそできる研修体制なんですね!
訪問看護は未経験でも、活動するにあたり必要なスキルや経験はありますか。
西田さん:
訪問看護師は、5年の病棟経験があれば大体は対応可能です。
利用者さんの状態を見てアセスメントし、対応して結果を見る、という流れは病棟と大きく変わりません。
病棟1~2年でも可能ですが、急変時などに「こういう状況はどうしたらいいか?」に不安になるとは思います。
―逆に病棟勤務と違うところ、ギャップに感じるようなところはどんなことですか。
西田さん:
訪問看護の良い点は、一人の患者さんと向き合う時間がしっかり確保できることですね。
1時間の訪問ならケアした後も、患者さんとじっくりコミュニケーションが取れます。
その点病院勤務だと、1人に割ける時間は1日多くて30分ほどになってしまいます。
一方の病棟勤務と違う点はオンコールがある点ですね。
訪問看護は、良くも悪くも自分で判断する場面が多いですが、正しい判断ができたときは達成感や成長を感じられます。
ワトレイの場合は、困ったときは日勤でも夜中でも相談OKで、スタッフ同士よく連絡し合っています。
また、一日に入浴介助4名、認知症ケア4名などが重なると体力的にしんどいときもあります。
自宅に帰ってからも「担当患者さん大丈夫かな?」とカルテを見返すことも。
オンとオフをしっかり分けたい方には少し大変かもしれませんが、これは性格にもよりますね。


■私たちは”最後に出会えるギャル”
―訪問看護に向いている人はどんな人だと思いますか?
西田さん:
自分や家族の幸せを大切にしながら、仕事はプロとしてやり切れる人。
自分の身近な人を大切にできないと、患者さんの幸せも考えられません。
まずは自分の身近な人を大切にし、幸せにできる人です。
家が散らかっている状況でも、スリッパやカバーなどを使って柔軟に対応できる人。
汚れた部屋が、訪問を重ねる中で少しずつキレイになっていく過程を楽しめるような人。
看取りを”悲しい出来事”だけでなく、
“選んでもらえた喜び”として捉えられる人。
必要な素養としては、
「挨拶・ドアをゆっくり閉める・靴を揃える」
これができれば十分。
「こんにちはー!」と元気に挨拶し、ドアを静かに閉め、靴をそろえる。
これができれば、あとは自然とついてきますよ。
―最後に、訪問看護に興味のある方へメッセージをお願いします。
在宅の看護を経験すると、人生も看護観も豊かになります。
看取りや、生命の法則・自然の法則について考えられるようになり、その人の望む最期を迎える事に寄り添う経験も積むことができます。
もし病院に戻ったとしても、その経験は必ず活きます。
70歳を超える患者さんからしたら、私たちは”最後に出会えるギャル”みたいな存在なんですよ(笑)
迷っているなら、一度来てみてほしい。
訪問看護は、本当に楽しいです!
―素晴らしいお話をありがとうございました!
【インタビュアー荒木のコメント】
西田さんのお話をお聞きして、私自身、訪問看護師というお仕事への印象が大きく変わりました。
訪問看護ってそれまでは、独りでの戦いだと思っていました。
だけど話を聞くと、”全然独りじゃない”仲間との連携プレイでした。
西田さんのお話を、ぜひ直接聞いていただきたいです。
熱意と覚悟、とにかく「かっこいい」の一言に尽きます。
西田さんの熱い思いに触れたら、訪問看護師に一歩踏み出せない方も、勇気が湧いてくると思います。
私は正直、自分が看護師ではないことに悔しい気持ちさえ感じました。
訪問看護師は在宅で最期を望む方たちの、「最期の天使」だと思います。
(西田さんはギャルだとおっしゃっていましたね)
私自身、家族が訪問看護師さんのお世話になっていた時のことを思い出し、号泣してしまいました。
訪問看護は、これからの超高齢化社会、在宅医療が求められる時代において、必要不可欠な看護形態であり、患者様一人ひとりに寄り添った看護をされたい方には是非目指していただきたいお仕事です。
訪問看護
ステーション
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